拠水林
◇尾瀬の地形
 尾瀬の基盤となる岩石は,日本で一番古い地層である秩父古生層で,今から2億5千万年以上前にできた粘板岩を主体とする堆積岩の地層です。ここに花崗岩,蛇紋岩などの火成岩が入り込んでいます。こうした岩石を今も多く残すのが至仏山一帯です。さらに,その後,尾瀬の周辺部の山域で起こった火山活動によって生成された安山岩が尾瀬のほとんどを覆いました。さらに10万年ぐらい前に燧ヶ岳が噴火し,只見川と沼尻川をせき止め,尾瀬ヶ原と尾瀬沼の原型を作ったのです。その後尾瀬ヶ原では7,000年くらい前から徐々に湿原が形成されました。
(写真左:至仏山から見た拠水林)

シュレンケとブルト  湿原は変化に富み,その状態によって低層湿原・中間湿原・高層湿原に分けられ,生育する植物にも差が見られます。尾瀬はほとんどがミズゴケ主体の高層湿原なのですが,表面が平らではなく凹凸があります。凹部は「シュレンケ」,凸部は「ブルト」と呼ばれ,水分の違いから生育する植物も異なっています。また,湿原は貧栄養・多湿で樹木の生育には適さないのですが,川の流れの沿って森林が続いているところがあります。これが「拠水林」で,川が周辺の山から土砂を湿原に運び,その周囲だけが富栄養・乾燥気味になったために樹木が生育できるようになって形成されたと考えられています。この他にも湿原には池塘,浮島,龍宮とよばれる独特の地形が見られます。 (写真右:シュレンケとブルト)

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