○自然公園法  (昭和32年6月1日 法律161号:抜粋)


第1章 総則
(目的)
第1条
 この法律は,すぐれた自然の風景地を保護するとともに,その利用の増進を図り,もつて国民の保健,休養及び教化に資することを目的とする。

(定義)
第2条
 この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 自然公園 国立公園,国定公園及び都道府県立自然公園をいう。
二 国立公園 わが国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地(海中の景観地を含む。以下同じ。)であつて,環境庁長官が第10条第1項の規定により指定するものをいう。
三 国定公園 国立公園に準ずるすぐれた自然の風景地であつて,環境庁長官が第十条第二項の規定により指定するものをいう。
四 都道府県立自然公園 すぐれた自然の風景地であつて,都道府県が第四十一条の規定により指定するものをいう。
五 公園計画 国立公園又は国定公園の保護又は利用のための規制又は施設に関する計画をいう。
六 公園事業 公園計画に基いて執行する事業であつて,国立公園又は国定公園の保護又は利用のための施設で政令で定めるものに関するものをいう。

(国等の責務)
第2条の2
 国,地方公共団体,事業者及び自然公園の利用者は,環境基本法(平成5年法律第91号)第3条から第5条までに定める環境の保全についての基本理念にのつとり,すぐれた自然の風景地の保護とその適正な利用が図られるように,それぞれの立場において努めなければならない。

(財産権の尊重及び他の公益との調整)
第3条
 この法律の適用に当たつては,自然環境保全法(昭和47年法律第85号)第3条で定めるところによるほか,関係者の所有権,鉱業権その他の財産権を尊重するとともに,国土の開発その他の公益との調整に留意しなければならない。

第2章 国立公園及び国定公園
第3節 公園計画及び公園事業
(公園計画及び公園事業の決定)
第12条
 国立公園に関する公園計画及び公園事業は,環境庁長官が,審議会の意見を聞いて決定する。
2 国定公園に関する公園計画のうち,保護のための規制に関する計画並びに利用のための施設に関する計画で集団施設地区及び政令で定める施設に関するものは,環境庁長官が,関係都道府県の申出により,審議会の意見を聞いて決定し,その他の計画は,都道府県知事が決定する。
3 国定公園に関する公園事業は,都道府県知事が決定する。
4 環境庁長官又は都道府県知事は,公園計画又は公園事業を決定したときは,その概要を公示しなければならない。

(公園計画及び公園事業の廃止及び変更)
第13条
 環境庁長官は,国立公園に関する公園計画及び公園事業を廃止し,又は変更しようとするときは,審議会の意見を聞かなければならない。
2 環境庁長官は,国定公園に関する公園計画を廃止し,又は変更しようとするときは,関係都道府県及び審議会の意見を聞かなければならない。ただし,その公園計画を追加するには,関係都道府県の申出によらなければならない。
3 前条第四項の規定は,公園計画及び公園事業の廃止及び変更について準用する。

(国立公園の公園事業の執行)
第14条
 国立公園に関する公園事業は,国が執行する。
2 地方公共団体及び政令で定めるその他の公共団体(以下「公共団体」という。)は,環境庁長官の承認を受けて,国立公園に関する公園事業の一部を執行することができる。
3 国及び公共団体以外の者は,環境庁長官の認可を受けて,国立公園に関する公園事業の一部を執行することができる。

第4節 保護及び利用
(特別地域)
第17条
 環境庁長官は,国立公園又は国定公園の風致を維持するため,公園計画に基づいて,その区域(海面を除く。)内に,特別地域を指定することができる。
2 第10条第3項及び第四項の規定は,特別地域の指定及び指定の解除並びにその区域の変更について準用する。
3 特別地域(特別保護地区を除く。以下この条において同じ。)内においては,次の各号に掲げる行為は,国立公園にあつては環境庁長官の,国定公園にあつては都道府県知事の許可を受けなければ,してはならない。ただし,当該特別地域が指定され,若しくはその区域が拡張された際既に着手していた行為(第4号の2に掲げる行為を除く。)若しくは第4号の2に規定する湖沼若しくは湿原が指定された際既に着手していた同号に掲げる行為又は非常災害のために必要な応急措置として行う行為は,この限りでない。
一 工作物を新築し,改築し,又は増築すること。
二 木竹を伐採すること。
三 鉱物を掘採し,又は土石を採取すること。
四 河川,湖沼等の水位又は水量に増減を及ぼさせること。
四の二 環境庁長官が指定する湖沼又は湿原及びこれらの周辺1キロメートルの区域内において当該湖沼若しくは湿原又はこれらに流水が流入する水域若しくは水路に汚水又は廃水を排水設備を設けて排出すること。
五 広告物その他これに類する者を掲出し,若しくは設置し,又は広告その他これに類するものを工作物等に表示すること。
六 水面を埋め立て,又は干拓すること。
七 土地を開墾しその他土地の形状を変更すること。
八 高山植物その他これに類する植物で環境庁長官が指定するものを採取し,又は損傷すること。
九 屋根,壁面,塀,橋,鉄塔,送水管その他これらに類するものの色彩を変更すること。
十 道路,広場,田,畑,牧場及び宅地以外の地域のうち環境庁長官が指定する区域内において車馬若しくは動力船を使用し,又は航空機を着陸させること。

4 特別地域が指定され,若しくはその区域が拡張された際当該特別地域内において前項各号に掲げる行為(同項第4号の2に掲げる行為を除く。)又は同項第4号の2に規定する湖沼若しくは湿原が指定された際同号に規定する区域内において同号に掲げる行為に着手している者は,その指定又は区域の拡張の日から起算して三箇月以内に,都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
5 特別地域内において非常災害のために必要な応急措置として第3項各号に掲げる行為をした者は,その行為をした日から起算して14日以内に,都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
6 特別地域内において木竹を植栽し,又は家畜を放牧しようとする者は,あらかじめ,都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
7 次の各号に掲げる行為については,前4項の規定は,適用しない。
一 公園事業の執行として行う行為
二 通常の管理行為,軽易な行為その他の行為であつて,総理府令で定めるもの

(特別保護地区)
第18条
 
環境庁長官は,国立公園又は国定公園の景観を維持するため,特に必要があるときは,公園計画に基いて,特別地域内に特別保護地区を指定することができる。
2 第10条第3項及び第四項の規定は,特別保護地区の指定及び指定の解除並びにその区域の変更について準用する。
3 特別保護地区内においては,次の各号に掲げる行為は,国立公園にあつては環境庁長官の,国定公園にあつては都道府県知事の許可を受けなければ,してはならない。ただし,当該特別保護地区が指定され,若しくはその区域が拡張された際既に着手していた行為(前条第3項第4号の2に掲げる行為を除く。)若しくは前条第3項第4号の2に規定する湖沼若しくは湿原が指定された際既に着手していた同号に掲げる行為又は非常災害のために必要な応急措置として行う行為は,この限りでない。
一 前条第3項第1号から第7号まで及び第9号に掲げる行為
二 木竹を損傷すること。
二の二 木竹を植栽すること。
三 家畜を放牧すること。
四 屋外において物を集積し,又は貯蔵すること。
五 火入れ又はたき火をすること。
六 木竹以外の植物を採取し,若しくは損傷し,又は落葉若しくは落枝を採取すること。
七 動物を捕獲し,若しくは殺傷し,又は動物の卵を採取し,若しくは損傷すること。
八 道路及び広場以外の地域内において車馬若しくは動力船を使用し,又は航空機を着陸させること。

4 特別保護地区が指定され,若しくはその区域が拡張された際当該特別保護地区内において前項各号に掲げる行為(前条第3項第4号の2に掲げる行為を除く。)又は前条第3項第4号の2に規定する湖沼若しくは湿原が指定された際同号に規定する区域内において同号に掲げる行為に着手している者は,その指定又は区域の拡張の日から起算して三箇月以内に,都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
5 特別保護地区内において非常災害のために必要な応急措置として第3項各号に掲げる行為をした者は,その行為をした日から起算して14日以内に,都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
6 次の各号に掲げる行為については,前3項の規定は,適用しない。
一 公園事業の執行として行う行為
二 通常の管理行為,軽易な行為その他の行為であつて,総理府令で定めるもの

(原状回復命令等)
第21条
 環境庁長官は国立公園について,都道府県知事は国定公園について,当該公園の保護のために必要があると認めるときは,第17条第3項,第18条第3項若しくは第18条の2第3項の規定,第19条の規定により許可に附せられた条件又は前条第二項の規定による処分に違反した者に対して,その保護のために必要な限度において,原状回復を命じ,又は原状回復が著しく困難である場合に,これに代るべき必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。

(報告の徴収及び立入検査)
第22条
 環境庁長官又は都道府県知事は,国立公園又は国定公園の保護のために必要があると認めるときは,第17条第3項,第18条第3項若しくは第18条の2第3項の規定による許可を受けた者又は第20条第2項の規定により行為を制限され,若しくは必要な措置をとるべき旨を命ぜられた者に対して,当該行為の実施状況その他必要な事項について報告を求めることができる。
2 環境庁長官又は都道府県知事は,第17条第3項,第18条第3項,第18条の2第3項,第20条第2項又は前条の規定による処分をするために必要があると認めるときは,その必要な限度において,当該職員をして,国立公園若しくは国定公園の区域内の土地若しくは建物内に立ち入らせ,又は第17条第3項各号,第18条第3項各号,第18条の2第3項各号若しくは第20条第1項各号に掲げる行為の実施状況を検査させ,又はこれらの行為の風景に及ぼす影響を調査させることができる。
3 前項に規定する職員は,その身分を示す証明書を携帯し,関係者の請求があるときは,これを提示しなければならない。
4 第1項及び第2項の権限は,犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

(集団施設地区)
第23条
 環境庁長官は,国立公園又は国定公園の利用のための施設を集団的に整備するため,公園計画に基いて,その区域内に集団施設地区を指定するものとする。
2 第十条第三項及び第四項の規定は,集団施設地区の指定及び指定の解除並びにその区域の変更について準用する。

(利用のための規制)
第24条
 国立公園又は国定公園の特別地域,海中公園地区又は集団施設地区内においては,何人も,みだりに次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一 当該国立公園又は国定公園の利用者に著しく不快の念をおこさせるような方法で,ごみその他の汚物又は廃物を捨て,又は放置すること。
二 著しく悪臭を発散させ,拡声機,ラジオ等により著しく騒音を発し,展望所,休憩所等をほしいままに占拠し,けんおの情を催させるような仕方で客引し,その他当該国立公園又は国定公園の利用者に著しく迷惑をかけること。
2 国又は都道府県の当該職員は,特別地域,海中公園地区又は集団施設地区内において前項第二号に掲げる行為をしている者があるときは,その行為をやめるべきことを指示することができる。
3 前項に規定する職員は,その身分を示す証明書を携帯し,関係者の請求があるときは,これを提示しなければならない。

(以下 省略)